コロナからの復興企画~関西演劇を広める、広げる

関西えんげき大賞

演技の窓~関西現代演劇俳優賞選考記録~ 第二十八回 関西現代演劇俳優賞

(左から)山内佳子、西村貴治

大賞受賞

西村貴治 ニットキャップシアター

京都のニットキャップシアターに所属しております、西村と申します。本日は、この様な歴史ある賞を受賞させていただき、感謝の気持ちで一杯でございます。賞状に「愛おしく表現した」という言葉を書いていただきまして、ありがとうございます。私、もう50過ぎているんですけど、『沼に咲く青いヒナギク』への出演のお話を、演出のごまのはえさんからいただいた時、20代の三角関係の話だと聞きまして、どこに私のやる役があるのか?という気持ちが初めにありました(笑)。男女の三角関係の中で、愛することの形が変わって、歪んでいき、みたいな役を、まさかこの歳になってできるとは思わなかったので。大体この歳になってくると、台詞も少なくなって、ただ、ちゃぶ台に座っているだけみたいな、おっちゃんの役が多いんですけど。この時期にそういう役をもらえた、というのは本当にタイミングに恵まれたと、今、本当に思います。
この作品の会場は、大阪大学中之島芸術センターのスタジオで、各席が三面で、お客様との距離も近い場所でやらせていただきました。これがもし違う劇場、プロセニアムですと、全然伝わり方が違ってきただろうと思います。普段あまり振り返ることをしないのですが、今回、賞をいただいて、自分で振り返ることができました。
今後、今回のような役がまたいただける、ということは、そうそうないかと思います。これからは年相応で、それでも魅せていけるような、渋さなどで勝負できるような役者として、頑張っていきたいと思っております。本日は、どうもありがとうございました。

西村貴治さんへの祝辞

ごまのはえ ニットキャップシアター

この『沼に咲く青いヒナギク』という作品は、俳優・西村貴治の実力が、充分に発揮された作品だと思っております。僭越ながら私が思うに、西村さんは、描写力が非常に優れた方です。
冒頭のシーン、町はずれの学校の前で、午後の雨の中、人を待っているというシーンがあるのですが、雨がどれくらい降っているのかとか、待っている人がどの方向から来るのか、とか、そういったことを1つ1つ、丁寧に描写されます。なのであとは観客の皆様が、どんな人を待っているのか、とか、どれくらいの時間待っているのか、とか、そういったことをすんなり想像してくれる。お客様の主体的な想像をしっかりとかき立てて、導いていってくれる。西村さんはそういう実力のある方だと思います。
そして人物の心理描写を、細かい小さい動作、仕草でコッソリやる人なんです。それを観たお客様は、「私だけが発見した」という風に思えるんです。でも実は、全然コッソリじゃないんです。一番目立つ所でコッソリやっていることをアピールするという、本当に高度なテクニックをお持ちで。そういうのはどこで覚えたのかな、というのは、長年の疑問です。
でも、今言ったそういうことは、「人間・西村貴治」が、これまで培ってきたものの結果だと思っております。西村さんは、本日の授賞式にもビジネスパートナーの方と一緒に来られていますけども、お店をなさっていて、2時間ぐらいかけて京都まで来て、お稽古なさって、ということをずっとされています。そういう気力、体力。そして世の中を観察する気持ちを持ち続けていらっしゃいます。そういった日々の努力が、俳優としての力に結実しているのではないのかな、と思います。おめでとうございます。

大賞受賞

山内佳子 劇団大阪

劇団大阪の山内佳子です。本日は、この様な素敵な賞をいただきまして、本当に、本当に、ありがとうございます。
九鬼さんからご連絡いただいた時も、全く信じられなくて、「えっ」っていう風に、本当にビックリした次第でした。
劇団のみんなにも伝えると、すっごく喜んでくれて、ありがたかったな、と思っております。
そして、この賞状を改めて読ませていただいて、俳優として、そういうことを評価していただけたのか、と、背筋がピンと伸びる様な、そんな気持ちになりました。(注:賞状には「突き抜けて明るく無垢な女性が、揺るぎない芸術家へと成長する様を周到に表現した演技」と記載)。
『落選の神様』は、劇団大阪と高橋恵さんとの初めてのコラボです。画家の片岡球子さんの半生を描く、個性的な作品で、その球子さんにキャスティングしていただきました。私は60代ですが、10代からスタートするということで、かなり無理もあったんですが、ガムシャラに球子さんに近づくという、その一点で取り組みました。
劇団のみんなが、本当に喜んでくれたし、何より、高橋さんに沢山のエネルギーをいただけたし、みんなと一緒に取り組めて、それでこんなに素敵な賞をいただけて、本当に嬉しいです。ありがとうございました。

山内佳子さんへの祝辞

高橋恵 虚空旅団

おめでとうございます。これは「演劇の神様」がくれたご褒美ですね。思いがけない受賞だったので、嬉しく思います。
山内さんは足の裏から地面のエネルギーを吸い上げて声にしているような力強さがあると思います。これまでの1つ1つのお芝居の経験が、今の彼女を作った賜物だとずっと感じていました。
山内さんだけではなく、劇団大阪さんのみなさんがそうだな、そういう座組なんだな、と、今回の受賞を受けて、改めてそう感じます。
『落選の神様』は、片岡球子さんという日本画家の半生を描いた作品で、初演が2021年でした。
ちょうどコロナ禍が始まった頃で、自粛や公演中止が続き、私の劇団も2020年に公演中止になってしまいました。初日前日に公演中止が決まり、あまりに悔しくって、その日のうちに来年の予約を取ったんです。その作品が『落選の神様』でした。片岡球子さんのバイタリティー溢れる生き方に、力をもらおうという動機がありました。
劇団大阪さんも「出演者は劇団員だけで公演がしたい」ということで、企画に関わらせていただきました。
外部から作・演出を呼ぶ、というのはなかなか劇団として勇気のいる決断だったと思います。その第一歩目で呼んでいただけたのは、大変嬉しかったし、出来る限りのことは、やらせていただこうと思いました。劇団のアトリエを所有している、ということもありますが、山内さんをはじめ劇団大阪の皆さんは、決まった稽古日以外でも自主稽古をされていて、先輩後輩のやり取りや、スタッフワークなどのお芝居以外のやり取りも頻繁になさっていました。結束力というか、劇団全員の協力というのが、非常に感じられたお芝居でした。
山内さんが受賞された賞ではありますが、劇団のみなさんでとられた賞じゃないかな、と思います。勿論、パワフルな山内さんが一心に事を前に運んだから、というのが一番ですが。
本当におめでとうございます。

第28回授賞式=2026年3月10日、大阪市のウイングフィールドにて

テープリライト:関下怜