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空の驛舎第26回公演「コクゴのジカン」が1月28日(金)よりアイホール(伊丹市立演劇ホール)で上演される。
時は2025年冬、百貨店「MITUYOSI 」のバックヤードを舞台に繰り広げる群像劇だ。老舗でもなく新規でもないそのデパートは5年前のパンデミックをなんとかしのいできたが、現在も綱渡りの経営が続いている。低価格におさえながら、上質な商品を提供し、地元の客に愛され、一定のニーズに応えてきたのだが、今年、とうとう営業時間の縮小、売り場の縮小に踏み切った――。
本作は、「今後、世界はどうなるのか?」という視点で、舞台をパンデミックの数年後に設定。百貨店の従業員が利用する食堂兼休憩室をベースに、本当の多様性や表舞台からでは見えない様々な人々の関わりや営みの様子をスケッチする。「そこから、変わるもの変わらないもの、失うもの、残るものを浮かび上がらせたい」と話すのは、作・演出の中村ケンシだ。
「この2年間のコロナ禍で、人との関わりがなくなったり、断絶が起こるなどで、大なり小なり人々は傷ついたんじゃないかと。本作では、現在よりちょっとだけ時間を進めて、一応、パンデミックは終わったという設定です。一応というのは、人々の中では終わっていない。傷はまだ癒えてないし、やっぱりすぐに元には戻らんだろうと。だからこそ、じゃあ、人間はどうしたらいいのかということを一緒に考えたいと思います。もう一回、人と人が豊かに関わっていかなければ、より良く豊かな人生は歩めないと思います」と企画意図を語る。だからこそ、演劇や文学には新しい価値観や思想、生き方を提示するという役割があるとも。本公演でもそれらを提示し、共に考えることを目的にする。
「劇場に来ていただき、同じ時間、空間を共有するのはアナログな体験です。タイトルで「ジカン」とカタカナで表記しているのは、「時間とは何だろう」という裏テーマがあります。一緒に時間を共有して、「そうだね」と共感するためには、演劇というのは有効な表現ではないかと思っています」。
「コクゴのジカン」というタイトルについても次のように話してくれた。「コクゴ」も「ジカン」もカタカナにしているのは、言葉を身につけていくということ。そのことで世界が立ち上がってくる。例えば想像力も言語活動だと。また、現代は言葉がないがしろにされているような感触があると思うんです。本来ならばその人がしゃべる言葉には背景があり、肌触りあり、温もりがあり、そもそも質量、重さがあると思います。そういうことを大事にしたいと思っています」。
また、劇中に実在しない女性が1人、出てくる。「ある人にとっては震災で亡くなった学校の先生だったり、お母さんもいれば憧れのAV女優など、様々な形で出てくるわけです。それはつまり、人間が言葉を持っているから。言葉でその人物を作り出して、やり取りをする。それを「コクゴのジカン」と名付けています」。
本公演は、伊丹市民の観劇料金が500円という取り組みもある。アイホールでは劇作家の北村想が塾長を務める劇作家養成のための戯曲塾「伊丹想流私塾」(現在は、岩崎正裕塾頭による「伊丹想流劇塾」)を開講しており、中村も「伊丹想流私塾」卒塾、のちに同塾の講師も務めた。
「私も長年、演劇をやってきて、はたと気が付いたのは、伊丹市の人に還元しないといけないというか、ベタですが「ありがとう」という気持ちです。伊丹は私の故郷で、ずっとアイホールで上演もしてきましたので、些細ではありますが恩返ししたい気持ちで伊丹市民は500円にさせていただきました」。
劇作家としてのキャリアはアイホールから始まったという中村。思い入れのある劇場で、時間と空間を共有したいと願う。
(インタビュー・文:岩本和子)
空の驛舎 第26回公演 「コクゴのジカン」
■日時
2022年
1月28日(金) 19:30
1月29日(土) 14:00/18:00
1月30日(日) 11:00/15:00
■会場
アイホール(伊丹市立演劇ホール)
■料金
前売3,000円
当日3,300円
ユース(22歳以下)2,000円
高校生以下1,000円
伊丹市民(枚数限定)500円
■問い合わせ・チケット取り扱い
劇団TEL(ナカムラ)090-4766-8751
https://sora-no-eki.jimdofree.com/next/
※10歳未満のお子様のご入場はご遠慮ください。
※開演の40分前より受付および整理券発行。開場は開演の30分前。
※ユース、高校生以下、伊丹市民の方は、身分証の提示をお願いいたします。