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関西えんげき大賞

アーティスト・インタビュー 清流劇場が古代ローマ喜劇を初上演、紀元前の劇作家・プラウトゥスの『綱引き』に挑む VIEW:672 UPDATE 2022.02.05

古代ギリシア劇の上演などで高い評価を得る劇団、清流劇場が、3月の最新公演で初めて古代ローマ喜劇を手掛ける。演目は『綱引き』。

劇作家・プラウトゥスによる本作。北アフリカの町・キュレネ(現在のリビア・ベンガジ)の町はずれ、さびれた浜辺に質素な神殿(お社)と粗末な家がある。家主のダエモネスが前夜の嵐の被害を奴隷のスケパルニオと確認していると、若者のプレシディップスが訪れる。恋人・パラエストラの身請け金を芸者屋に支払った彼は、「神殿の前に来るように」と芸者屋に言われてやってきたが、パラエストラの姿は見えない。芸者屋はプレシディップスの金を着服すると、パラエストラら芸者を連れて海の向こうの町・シキリアへ逃亡していたのだった――。恋人、親子、主人と奴隷など、様々な関係性が絡み合いながら、最後は漁の網にかかったカバンを巡リ、文字通り“綱引き”を繰り広げる。

「シェイクスピアやモリエールなど、世に言われるコメディの源流をたどるとローマ喜劇にたどりつくので、清流劇場としては一度、通過しておきたい分野でした」と、上演に至ったいきさつを話す劇団代表の田中孝弥。

これまで上演しなかった理由を尋ねると「いくつか読みましたが、構造的に破綻していて、つまらなかったんです(笑)」と率直に話す。そのうち、「構造が一番しっかりしている」と『綱引き』を選んだという。

本作の翻訳者・小林標によれば、古代ローマ喜劇の上演は本公演が日本初だそうだ。「ローマ喜劇は元々研究者が少ない上に、当時の政権や時事問題への皮肉を笑う “共時性の戯曲”にならざるを得ず、どうしても研究が難しくなり、これまで上演もされなかったそうです」と田中。

ダジャレや言葉遊びを用いた作品が多いというプラウトゥスの作風を「人間ドラマといいますか、市民の日常に近いものが描かれています。松竹新喜劇のようなものと言うとわかりやすいかもしれません」と表す。市井の人々の生活を情感豊かに描いた作品が多い松竹新喜劇は、人間の普遍的なおかしみでも笑いを誘う。

「『綱引き』も、たとえば、家主のダエモネスは清廉潔白で非常にまじめな暮らしをしているけれども、彼の奴隷は反対にお金に執着し、非常に欲深い。こういった関係性は今もありますよね。そういう“人は昔から変わらへんな”と思えるところが見えたらいいなと思います」。

一方、家父長制度や奴隷制度、女性の権利が尊重されていない場面など、描かれている社会的背景は今とは異なる。「そのまま見せてしまうと、現代では受け入れられません。だから、何とか面白くなるよう格闘中です(笑)。たとえば“夫に小言を言うお嫁さん”など、現代的な価値観を取り入れたり、シチュエーションを付け加えるなどしています。時代設定を現代に置き換えるということではありませんが、今の人にもわかりやすくなるように物語を補強しています」。

そして、上演を機に「“古代ローマの作品も面白いんだなあ”と思ってもらって、そこからシェイクスピアやモリエールにつながっていることを知ってもらいたい」と、体系的な演劇の楽しみ方も提案する。

(取材・文/岩本和子)

清流劇場2022年3月公演『綱引き』

■日時
2022年
3月9日(水)19時
3月10日(木)19時
3月11日(金)14時・19時
3月12日(土)14時(終演後、アフタートークあり。出演者はwebで公表)
3月13日(日)14時
※各回、開演15分前から田中孝弥による《ビフォアトーク》あり。

■会場
一心寺シアター倶楽

■料金
日時指定・全席指定席
前売4,300円
当日4,600円
ペアチケット8,000円
U-22券2,500円(22歳以下の方を対象。当日受付にて、要証明書提示)
シニア券4,000円(65歳以上の方を対象。当日受付にて、要証明書提示)

■Live Video 動画配信『綱引き』
配信期間:2022年3月19日(土)~3月27日(日)
視聴料金:3,000円(田中孝弥のビフォアトーク&公演パンフレット電子版付き)

■詳細
https://seiryu-theater.jp