九鬼葉子
大阪芸術大学短期大学部メディア・芸術学科教授
演劇評論家
日本経済新聞、テアトロほかに劇評を連載。兵庫県立尼崎青少年創造劇場運営委員、関西現代演劇俳優賞選考委員ほか。著書に『関西小劇場30年の熱闘~演劇は何のためにあるのか~』(晩成書房、2016年)、『阪神大震災は演劇を変えるか』(共著、晩成書房、1995年)、『29歳の女たち』(リヨン社、1996年)。2021年、兵庫県功労者表彰(文化功労)受賞。
九鬼葉子の執筆記事
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A級MissingLinkの土橋淳志、地下世界を描く新作に込めた思い UPDATE 2024.07.29
2000年、近畿大学生が在学中に旗揚げしたA級MissingLinkで、結成以来、作・演出を務める土橋淳志。2011年には仙台を活動拠点にする劇団三角フラスコと東日本大震災をテーマに合同公演を実施。その後も、震災後の日本が抱える個人や社会の問題などをテーマに、真摯に作品を発表してきた。人の痛みは、他者には計り知れないという謙虚な態度は崩さず、しかし精一杯想像する。視点が多彩で、人に対する視線が優し...
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劇団壱劇屋の大熊隆太郎、観客参加のオールスタンディング演劇の見どころを語る UPDATE 2024.05.17
「劇場に来るって、めっちゃ楽しいこと!と、感じてほしい」と語るのは、劇団壱劇屋代表の大熊隆太郎。6月14日から兵庫県伊丹市のアイホールで上演される新作『LOVE TOURNAMENT』(大熊隆太郎脚本・演出)は、観客参加型の「オールスタンディング演劇」だ。あたかもスポーツ観戦するかのように、観客は、鑑賞と体験の両方が楽しめる、一体感のある演劇。コロナ禍以降、まだ完全には動員が以前のように戻っていな...
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空晴の岡部尚子が新作を語る。 UPDATE 2023.08.16
劇場に行く楽しみの一つに「気分が変わる」ということがある。仕事上の難題に遭遇した時、あるいは人間関係に行き詰まった時、一人で悩んでいると、どんどん煮詰まっていくものだが、気分を変え、別の角度から状況を観察できれば、前に進めることがある。空晴(からっぱれ)の芝居は、観ていて、気分が変わる。明るくて、笑えて、わかりやすい。そして、心に残る、いい台詞のある作品。家族など、人間関係がリアルに描写され、誰に...
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兵庫県立ピッコロ劇団の演出家・眞山直則と劇団部長・田窪哲旨が語る演劇のキャパシティ UPDATE 2023.06.29
1994年、全国初の県立劇団として旗揚げした兵庫県立ピッコロ劇団。兵庫県立尼崎青少年創造劇場ピッコロシアターの付属劇団だ。民間の劇団がほとんどの日本において、その存在は貴重である。作品創作のほか、独自のアイデアで様々な社会的活動を行い、地域貢献している。活動の幅広さは比類ない。まず公演活動としては、本公演のほか、「オフシアター」(劇団員が主体となり、小ホールで行う実験的な公演)、大人も子供も楽しめ...
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注目の劇作家・コトリ会議の山本正典。人間のささやかな営みを繊細に描く、「和」の熱量 UPDATE 2022.10.25
全く新しい文体で、関西演劇界に新風を巻き起こす、最も熱い注目を集める演劇アーティストの一人、山本正典(40歳)。兵庫県を拠点とする劇団、コトリ会議の劇作家・演出家・俳優である。12月2日から、兵庫県伊丹市のアイホールで新作『みはるかす、くもへい線の』が披露されるのを前に、作品作りのことや、これから行いたいこと、そして、彼に最も影響を与えた劇作家・演出家・俳優の鈴江俊郎への思いなどを聞いた。芸術とは...
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劇団未来が、創立60周年記念公演でカナダの名作戯曲に挑む。継承する劇団の信念を、しまよしみちが語る。 UPDATE 2022.09.27
劇団未来が創立60周年を迎えた。創立以来劇団代表を務めた森本景文が2018年に急逝した後、演出を一手に引き受けるしまよしみち(45歳)。人望の厚い、巨星急逝のショックを、劇団員とともに乗り越え、森本の志を継承。座付作家・和田澄子作品をはじめ、常に良質の戯曲にアンテナを張り、最近は海外、日本の小劇場演劇を含め、現代戯曲の上演が続く。1987年、大阪市城東区に「未来ワークスタジオ」という拠点を構え、年...
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現代社会の問題とリンクする、劇団五期会の『ハムレット奇譚』。井之上淳が、大胆なシェイクスピア解釈を語る。 UPDATE 2022.09.09
劇団五期会が、シェイクスピアの戯曲『ハムレット』をベースにした『ハムレット奇譚』を上演する(9月30日~10月2日、大阪市のABCホールにて。シェイクスピア原作、イシワキキヨシ翻案・脚色、井之上淳演出)。翻案・脚色のイシワキキヨシは、井之上淳のペンネームである。原作の物語の骨格を借りながら、独自の解釈を交えたオリジナル・ストーリー。血と権力、愛憎が渦巻く世界から、現代社会が垣間見える構造だ。翻案・...
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“あきらめない、夏”2022 大阪女優の会副代表・金子順子が語る、今、伝えたい言葉。非戦への願い。 UPDATE 2022.07.25
圧倒的な演技力。関西が誇る俳優の一人、金子順子(コズミックシアター主宰)。新劇出身だが、小劇場の若手・中堅アーティストとも幅広く積極的に交流し、2018年には空の驛舎の『かえりみちの木』(中村ケンシ作・演出)に出演、第21回関西現代演劇俳優賞・女優賞を受賞している。新しい分野にチャレンジし続けるベテラン女優だ。その金子が、関西の演劇人達と長年取り組む、非戦を訴える舞台“あきらめない、夏”が、今夏も...
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アイホール・ディレクター最後の仕事、次世代応援企画『break a leg』。岩崎正裕は今、何を思う。そして、これから。 UPDATE 2022.05.20
昨年、関西演劇界に走った激震。伊丹市立演劇ホール、愛称・アイホールの劇場閉鎖問題。1988年開館以来、民間プロデューサーを登用し、その後、劇団𝄌太陽族の岩崎正裕をディレクターに、数々の自主企画で関西演劇界の活性化に寄与した、文字通りの演劇の一大拠点。存続を願う署名運動など、多くの人々の熱意により、なんとか閉鎖は免れ、当面、劇場は維持されることにはなった。しかし、予算削減で自主事業は激減、そしてディ...
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分断社会を乗り切る。MONOの新作『悪いのは私じゃない』は、オフィスが舞台の会話劇 UPDATE 2022.02.22
かつてないほど、コミュニケーションの懸案が加速しているのではないか。コロナ禍での社会の分断。SNS上の負の応酬。そしていじめ、パワハラ。MONOの土田英生の新作『悪いのは私じゃない』(3月23日~27日、大阪市のABCホール)は、現代社会の人間関係の難しさが、オフィスを舞台に描かれる。テーマは真摯だが、笑いのセンスが抜きん出る土田の筆力と演出、そして、俳優達の息の合った演技により、「ちょっと間抜け...
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